5 外部評価委員会の意見

⑴ 業務環境について

      福岡財務支局佐賀財務事務所の佐賀県内経済情勢報告によると、「県内経済は、持ち直している。」とされてい

       る。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなか、ウクライナ危機やエネルギー・原材料の高騰、物

       価高なども重なり、売上や収益の回復が遅れ業績が悪化している企業も多く、企業倒産の増加も懸念されている。

      このような環境の中、佐賀県信用保証協会(以下「協会」という。)においては、コロナ資金の元金返済が本格化

       した中小企業者の資金繰支援を積極的に行うとともに、経営改善や事業承継などの支援が必要な中小企業者に対し、

       経営支援を強化して専門家やアドバイザーの派遣に取り組まれている。また、代位弁済は前年度を上回ったものの、

       経営状況が悪化している中小企業者からの条件変更に柔軟に対応されるなど企業の資金繰安定に努められ、中小企業

       者の経営の安定に一定の役割は果たされている。


⑵ 重点課題の評価について

① 保証部門


ア コロナ禍などにおける資金繰支援への取組み

    保証承諾はコロナ資金の反動により年度当初は低調に推移したが、コロナ資金の借換えを主目的とした「伴走支援

     型特別保証」や金融機関と連携した「提携保証」を活用し、資金繰支援に努められた結果、令和2年度に申込が殺到

     したコロナ資金の承諾が翌年度にずれ込んだ前年度を下回ったものの、計画を上回る実績となった。

    今後もコロナ資金を含め債務負担が増加している中小企業者から資金繰安定資金の申込や条件変更の申込が見込ま

     れることから、引き続き、中小企業者の実情をしっかりと把握し、実情に即した金融支援を行って頂きたい。


イ 経営者保証を不要とする保証への取組みの強化

    経営者保証を不要とする保証の周知普及のため、広報誌やホームページに概要を掲載したが、前年度はコロナ資金

     独自の経営者保証免除の適用もあり件数、金額ともにその取扱いが大幅に減少した。

    経営者保証を不要とする保証の取組みについては、国も「経営者保証改革プログラム」を策定するなど個人保証に

     依存しない融資慣行の確立に向け取り組んでおり、引き続き、経営者保証を不要とする保証の推進に積極的に取り組

     んで頂きたい。


ウ 保証業務の電子化へ向けた継続的な取組み

    全国統一の保証業務電子化のシステム開発(保証申込電子受付システム)に対応するため、期初に当該システム導

     入の前提となる各種書類の押印レス化を実施したことについて、金融機関・商工団体へ周知を図り、混乱なく順調に

     移行できたことは評価できる。

    上記システム導入とは別に「信用保証書の電子化」や県内の金融機関2行との各種書類を電子メールでの授受を行

     うことも開始することから、順調に導入・稼働ができるよう内部体制を整えて頂きたい。

 

② 期中管理・経営支援部門


ア 期中支援(経営改善支援)及び再生支援の強化

    経営改善支援先として24社を選定し、経営改善計画の策定支援に取り組まれた。また、別途経営支援候補先として

   74社を選定し、令和4年度から設置している経営支援サポーター(中小企業診断士)が訪問面談などによる伴走支援

     を実施し、経営改善計画の策定などに繋げられた。

    また、コロナ禍の影響を強く受けている中小企業者については、中小企業活性化協議会と連携しながら、「収益力

     改善に向けた計画支援」や令和4年10月から開始した「405事業に対する補助事業」を活用し、43社に対して経営改

     善に係る計画策定支援に取り組まれた。

    以上の実績は、計画に応じた経営改善支援が実現されたことを定量的に示すものといえ、評価できる。

    経営改善支援や再生支援が必要と判断される先については、今後も増加すると見込まれることから、国が示した

    「中小企業活性化パッケージNEXT」を踏まえつつ、金融機関や中小企業活性化協議会などと連携を更に強化して頂

     きたい。


イ 事業承継支援の強化

    経営者の年齢が高齢な保証申込先や経営者交代の報告を受けた35社に対し、事業承継特別保証を紹介するなど金融

     機関と連携して取り組み、4社1億4,200万円の事業承継特別保証の保証承諾を行われた。また、経営者保証コーデ

     ィネーターとの連携を強化するために12回の定例会議を開催し、今後の取組方針や事業承継特別保証の利用見込み、

     進捗状況などの情報を共有する取組みや、地場金融機関本部を訪問して事業承継特別保証の推進や金融機関の事業承

     継に係る研修会で講師を務めた取組みについても評価できる。

    令和5年度には保証料負担がない事業承継特別保証の佐賀県制度融資が創設されることから、これまでの取組みを

     継続しつつ、今後も経営者保証コーディネーターや金融機関と連携しながら円滑な事業承継に繋がるよう取り組んで

     頂きたい。


ウ 経営支援効果測定のための蓄積データの検証

    創業支援や再生支援などの支援項目ごとの取組実績のデータ蓄積を行われていることは評価できる。

    今後は、かかる蓄積データを踏まえ、将来的に具体的な支援内容と支援先の経営状況の推移との相関関係について

     検証を行って頂きたい。また、検証に際しては、対象となる事業者や協会内部での計画を踏まえた達成度の評価に留

     まらず、第三者の見地からみても支援が奏功したことを把握可能とするような整理ができないかを検討頂きたい。

    専門家派遣制度などには公的資金による支援も含まれることから、データに基づく検討を早期に可能なものとし、

     将来的な経営支援業務をより効果的なものとして頂きたい。

    なお、データの蓄積においては、支援先の理解のもと進められるよう配慮頂きたい。


エ 経営支援部門の組織体制の強化

    業務統括部から経営支援部門と回収部門を分離させ、経営支援部に組織改正するとともに職員を1名増員された。

     また、保証部との連携を図るために保証課各課長2名が経営支援シニアスタッフとして兼務するなど経営支援業務の

     取組みを強化されている。さらに、中小企業診断協会から推薦を受けた中小企業診断士1名を経営支援サポーターに

     任命し、中小企業者の経営改善計画の策定支援に繋がる取組みを実施しており評価できる。今度も業務環境に応じた

     柔軟な組織体制の構築に継続して取り組んで頂きたい。


③ 回収部門


ア 回収効率化の促進

    定期回収や不動産回収は概ね目標に達している。一方で、保証債務免除による回収は、件数、金額ともに増加した

   が、求償権消滅保証による回収は提案を行ったものの保証承諾までには至らなかった。また、減免による一括回収と 

     不動産競売も件数、金額ともに減少し計画未達となった。これらによる回収は計画が難しい側面もあり、回収総額の

     目標値の算定にあたっては、現実的な回収可能性を考慮して定める必要がある。

    連帯保証人の高齢化による収入の先細り、担保となる資産のさらなる減少など、求償権先の回収環境は今後さらに

     厳しくなることが予想される。今後も求償権先への状況把握を継続しつつ、効率的な回収業務に取り組んで頂きた

     い。


イ 求償権管理の効率化

    昨年度に引き続いて求償権整理等を促進し、求償権残高を圧縮され求償権回収の効率化を図られた。引き続き、案

     件の実情把握に努め、減免の積極的な活用等を通じて、更なる効率化に取り組んで頂きたい。


④ その他間接部門


ア 内部管理体制の充実

    コンプライアンス・プログラムに掲げた項目を着実に実施され、また反社会的勢力等の排除に向けた情報収集やス

     クリーニング作業も継続的に取り組まれている。

    今後もコンプライアンス態勢の維持・向上に継続的に取り組んで頂きたい。

 

イ 人材の育成と職場環境の充実

    人材の育成については、職員の専門的知識の習得及びスキルアップを図るため、各種研修やセミナー等の受講や金

     融機関研修会等への講師派遣を行われている。また、職場環境の充実については、衛生委員会で策定した計画の実施

     や、特定保健指導者に対して体質改善や健康増進の一助として医療機関の受診を促すことにより役職員の健康増進に

     も努められている。

    今後もこれらを継続的に実施し、職員の更なる専門的知識の習得及びスキルアップや健康な職場づくりを図って頂

     きたい。


ウ 広報活動の充実

    これまでの活動に加え、昨年度制作したオリジナルキャラクターを用いたノベルティグッズを作成し、広報とLI

     NE(SNS)登録の推進を図るなど継続的な取組みは実施されている。ただ、登録者数はあまり伸びていない状況

     であるから、媒体に応じた広報の方針について今一度検討が必要と思われる。

    今後も更に効果的な情報発信の取組みを検討頂きたい。

 

エ 業務の効率化と電子化の推進

    全国統一の保証業務電子化のシステム開発(保証申込電子受付システム)や、県内の金融機関2行との各種書類を

     電子メールでの授受を行うこと等に対応するため、選任した職員による電子化推進チームを立ち上げ、月一回定例的

     に会議を実施されている。また、保証部や経営支援部との連携や情報共有を図りながら、今後の保証業務の電子化の

     取組み方針などを検討されたことは評価できる。

    ランサムウェアの被害をはじめ、情報セキュリティを取り巻く環境が厳しいものとなっていることから、今後の導

     入に向けては、組織体制の整備、システムベンダーとの緊密な情報共有を通じて、情報セキュリティについて万全の

     体制を整えたうえで推進して頂きたい。

⑶ 事業計画・収支計画・財務計画について

    事業計画について、保証承諾はコロナ資金の反動により年度当初は低調に推移し、その後金融機関との提携保証や

     県伴走支援型特別保証制度の創設により保証申込が幾分回復し、年度計画を上回ったものの、コロナ資金の承諾が翌

     年度にずれ込んだ前年度を下回る結果となった。また、保証債務残高はコロナ資金の元金返済が本格化したことによ

     り前年度を下回ったものの、ほぼ計画どおりとなった。

    一方、代位弁済は、多くの企業でコロナ資金の元金返済が本格化し、返済負担が増加することから前年度を大きく

     上回ることを見込んでいたが、借換保証や条件変更などを柔軟に対応したことや経営改善支援・再生支援業務を強化

     したこともあり、計画を下回った。回収は、回収環境が年々厳しくなっていくなか、不動産処分は順調だったものの

     定期回収の落込みや一括回収が少なかったため、前年度及び計画を下回った。

    収支計画について、経常収支は、保証債務残高が減少基調にあるものの高い水準にあり、保証料及び事務補助金は

     確保できており7億754万円の黒字となった。また、経常外収支も責任準備金の積立て基準の見直しによる繰入・戻

     入の再計算にて戻入金額が増加したことで6,760万円の黒字となり、制度改革促進基金4,073万円を取崩して当期収支

     差額は8億1,587万円の黒字となり、過去最高額(に近い金額)となった。

    以上の収支、財務の状況を踏まえると、コロナ資金の需要に応じることでの収入増は、漸減傾向にあるとしても当

     面継続することが期待され、協会の経営状況は安定して推移することが予想される。また、実績が協会の年度計画と

     合致したことは、協会がかかる推移を正確に把握できていることを示すものであり、評価すべき点である。

    長期的にはコロナ資金の需要による影響が減少していくことが想定されるため、現時点での収益については、必要

     な事業に充てつつ、一方で将来に向けての内部留保を拡充することも積極的に検討頂きたい。

    財務計画について、収支差額の8億1,587万円は、収支差額変動準備金に4億793万円、基金準備金に4億794万円

   をそれぞれ繰り入れし、期末の基金準備金は82億4,538万円となった。

    協会が中小企業者の保証需要に安定して応え、公共的使命を果たしていくためには、基本財産の充実が不可欠であ

   り、そのためにも確実に収益が確保できるような取組みを引き続き行って頂きたい。

 

⑷ 総括

    年度経営計画に掲げられている各部門の重点課題への取組みを積極的に実施し、令和4年度も収支差額変動準備金

     と基金準備金の積み増しによる基本財産の充実ができたことは非常に評価できるものである。

    県内中小企業を取り巻く経営環境が依然として厳しいなか、業績回復の遅れやコロナ資金の返済開始により返済負

     担が重くなっている中小企業者も多いことから、経営改善・再生支援や期中管理の強化など協会の果たす役割は益々

     重要となってきている。今後も中小企業者の実情に応じた資金繰支援、経営支援に最優先に取り組んで頂き、地域経

     済発展のための協会の役割・貢献に多いに期待するものである。


 以 上

佐賀県信用保証協会ロゴ

Copyright (C) SAGA GUARANTEE All rights reserved.