令和3年度経営計画

1 業務環境

⑴ 佐賀県の景気動向

 我が国経済は、内閣府の月例経済報告によると「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる。先行きについては、緊急事態宣言の解除後も感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待される。ただし、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。」とされています。

 一方、県内経済の動向は、佐賀財務事務所の佐賀県内経済情勢報告によると「県内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい状況にあるなか、一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直しつつある。先行きについては、感染拡大の防止策を講じるなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。」とされています。

⑵ 中小企業を取り巻く環境

 県内中小企業の景況判断は、佐賀財務事務所の法人企業景気予測調査によると、業種別では製造業、非製造業ともに下降に転じており、規模別にみると大企業、中堅企業は引き続き上昇、中小企業は下降に転じています。先行きを全産業で見ると上昇と下降が均衡する見通しとなっており、新型コロナウイルス感染症の影響により先行きは不透明となっています。

⑶ 信用保証協会を取り巻く環境

 令和2年から始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済活動の制約・縮小に伴う影響に対処するため、実質無利子・無保証料の「佐賀県新型コロナウイルス感染症資金繰り対策資金」及び「佐賀県新型コロナウイルス感染症対応資金」(以下「コロナ資金」という。)が創設され、事業者に対する資金供給が過去に例を見ない規模で実施されました。

 このことにより、佐賀県信用保証協会(以下「協会」という。)においては令和2年末における保証債務残高は約2,000億円と前年度の約2.7倍にのぼり、協会の利用企業者も前年度末の6,923社から今年2月末には9,946社へと大幅に伸長しました。

 また、コロナ資金の返済緩和措置により2年後に返済が開始される案件が保証の約半数強を占めています。

 このように、令和3年度経営計画期間中においては、

・ 事業者の債務の増大

・ 景気動向の不透明感

 などを要因として、協会を取り巻く業務環境は大きく変動することが想定されます。

 

2 業務運営方針

⑴ 保証部門

 ・ コロナ禍により業績回復が遅れている中小企業へ各種政策保証を活用した資金繰り支援を積極的に行いつつ、業績

  悪化しているなどの要因により専門家の助言が必要と思われる中小企業へ専門家を紹介する取組みを経営支援部門と

  連携して実施します。

 ・ 経営者保証が中小企業の事業承継や経営者の再チャレンジの進まない一因となっており、将来の事業承継や再チャ

  レンジの促進を図るため、金融機関と連携を図りながら経営者保証を不要とする保証を推進します。

 ・ 全国信用保証協会連合会を中心に「保証業務の電子化」の検討が進められており、電子化への移行を円滑にするた

  めの方策を実施します。

⑵ 期中管理・経営支援部門

 ・ コロナ禍により景気の先行きが不透明となっているなか、資金繰り支援と併せて期中支援(経営改善支援)及び再

  生支援を強化します。

 ・ 事業承継ネットワーク事務局(経営者保証コーディネーター)及び金融機関と連携しながら「事業承継特別保証」

  を活用しつつ、事業承継の実現に取り組みます。

 ・ 経営支援の取組みを今後向上していくために、その効果を検証するための各種支援のデータを蓄積していきます。

⑶ 回収部門

 コロナ禍の影響による代位弁済の増加により回収環境は更に厳しくなると予想されます。

 求償権回収の効率化を図るため、初動を徹底するとともに関係者の実情を踏まえた対応や再生支援の目線を取り入れた対応を行っていきます。

 また、管理事務停止や求償権の整理を推進し、管理の効率化に取り組みます。

⑷ その他間接部門

 協会の公共性と社会的責任の重さを認識し、運営基盤の安定化を図るとともに、近年の様々な危機に対応できる組織体制づくりに取り組みます。また、健全な業務運営を通じて当協会への信頼を確立するため、業務環境の変化に対応できる人材の育成と情報発信に取り組みます。

 

3 主な重点課題

⑴ コロナ資金終了後の資金繰り支援への取組み

 コロナ資金終了後の国や地公体の施策を積極的に取り組み、中小企業の資金繰り支援を実施しつつ、中小企業や金融機関、商工団体等へのアンケートなどによる情報収集を行い、コロナ禍において変化した中小企業のニーズやライフステージを把握します。

 また、コロナ禍の影響を受け経営改善等が早期に必要な中小企業に新たな資金が必要な場合は、金融機関の継続的な支援を条件とする「伴走支援型特別保証」などで支援し、経営の安定を図ります。

 加えて、経営状況の悪化などにより専門的な助言が必要と思われる中小企業を保証や条件変更の申込時に把握し、経営支援部門と連携し、専門家を紹介する取組みを実施します。

⑵ 経営者保証を不要とする保証の適切な対応

 経営者保証を不要とする保証の推進のため、「財務要件型無保証人保証」及び「金融機関連携型」、「担保充足型」の保証に積極的に取り組みます。

 また、経営者保証を不要とする取扱い及び「財務要件型無保証人保証」の概要を月報やホームページなどで紹介し、金融機関及び関係団体へ更なる周知を図ります。

⑶ 保証業務の電子化へ向けた効率的な事務手続への取組み

 令和3年4月から信用保証申込書等の書式変更と7月から信用保証委託契約書の徴求時期の変更が実施されるため、書式改正と事務手続きの見直しを行うとともに金融機関等へ説明会開催などで周知を図り、円滑に開始ができるよう取り組みます。

 また、次年度以降も継続されるため、連合会からの情報収集を図ります。

⑷ 期中支援(経営改善支援)・再生支援の強化

 ・ 経営改善支援候補企業を選定したうえで、金融機関や専門支援機関と連携した対応を図ります。

 ・ 経営改善支援実施企業のうち、依然としてコロナ禍の影響を受け、特に当面の資金繰りに対応する必要がある中小

  企業については、再生支援協議会の「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」に取り組みます。それに加え

  て新たな資金が必要な場合は、伴走支援型特別保証などを併用しながら資金繰りの安定化を図ります。

 ・ 中小企業経営診断システム(McSS)を利活用し、経営改善支援実施企業とのコミュニケーションを深めていき

  ます。

 ・ 今後、増加することが見込まれる期中支援(経営改善支援)の取組みに対し、迅速かつ円滑に対応するため内部態

  勢の強化を図ります。

⑸ 事業承継支援の強化

 ・ 事業承継特別保証(以下「承継特別」という。)の推進のために「経営者保証コーディネーター」との連携を強化

  します。

 ・ 金融機関の内部研修などで承継特別の周知を図ります。

 ・ 承継特別の利用候補企業リストを作成し、金融機関に同リスト企業の事業承継の取組状況など聴取しながら承継特

  別を提案し、普及拡大に取り組みます。

 ・ 専門家派遣事業による事業承継計画策定支援も必要に応じて取り組みます。

⑹ 経営支援の効果測定のためのデータ蓄積

 ・ 「創業支援」「期中支援(経営改善支援)」「再生支援」「事業承継支援」の各種支援ごとに以下の測定項目の実

  績データを蓄積していきます。

  〇 創業支援

    創業後のモニタリング実施方法、モニタリング結果、相談内容、相談内容の対応策

  〇 経営改善支援

    関与する専門支援機関、専門家派遣の内容、経営サポート会議及び金融支援内容、モニタリング結果、CRD財

   務点数

  〇 再生支援

    再生支援協議会の計画内容、モニタリング結果、CRD財務点数

  〇 事業承継支援

    支援内容、事業承継予定時期、モニタリング結果

⑺ 回収効率化の促進

 ・ 定期弁済を継続している連帯保証人に対しては、一部弁済による保証債務免除に取り組みます。

 ・ 再生可能な中小企業へは、経営支援部門と連携し、求償権消滅保証に取り組みます。

 ・ 不動産任意処分が困難な求償権へは、競売への移行に取り組みます。 

⑻ 求償権管理の効率化

 回収見込みの早期見極めを行い、回収見込みがないと判断した場合は、速やかに管理事務停止を推進し、求償権整理に取り組みます。

⑼ 内部管理体制の充実

 ・ コンプライアンス・プログラムの着実な実施及び反社会的勢力等の排除の取組みを継続します。

 ・ 近年の様々な危機に対応するための情報の収集と迅速な対応を図ります。

⑽ 人材の育成と職場環境の充実

 ・ 外部研修への参加や関係機関との勉強会、セミナー等への講師派遣により職員の専門的知識の習得とスキルの向上

  を図ります。   

 ・ 新入職員に対するOJTを継続的に実施し、専門的知識の習得を促進します。

 ・ 年間健康推進計画を着実に実施し、ワークライフバランス及び職員の健康管理を推進します。

⑾ 広報活動の充実

 協会の保証推進活動や取組みを正確、タイムリーに発信し信頼度を向上させるため、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用した広報に取り組みます。また、広報活動を通して金融機関や関係団体と連携しながら保証利用企業者の維持を図ります。

 

4 保証承諾等の見通し

 令和3年度の保証承諾等の主要業務数値(見通し)は、以下のとおりです。

 

項  目

金  額

前年度計画比

保証承諾

300億円

100.0%

保証債務残高

1,920億円

246.2%

代位弁済

12億円

126.3%

回  収

5.5億円

 78.6%

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